進捗置き場

競プロの問題の解説など.大雑把な方針と自分のコードだけ載せてます

2021/08/28


柚木麻子のBUTTERを読了した。結構面白かったのだが、上手く感想が言語化できなかったので、雑に箇条書きで思ったことを綴ろうかと思う。


  • 実在の結婚詐欺事件をモチーフにしたもの。記者である主人公里佳が容疑者のカジマナに取材のため接触するうち、その独特な価値観と語りに影響され、日常が変化していくというあらすじ

  • カジマナの価値観は、自らの欲望に忠実にありつつも、旧来の「女性らしさ」を良しとするもの。特にグルメに関して強いこだわりを持つが、料理サロンに通うまでは単に料理を男性を喜ばせる手段としか考えていなかった。男性に対する依存性が強いが、かつて自分が惹きつけてきた男性の中身のなさに辟易していたようだ。現代社会における女性の生きづらさ(スリムかつ綺麗であれという重圧が鬱陶しいというのは書かれていたが、他あったかな……?)を皮肉ったところがあり、そういう点に主人公は感銘を受けていたように思われる。その尖った価値観から一部の人間にカリスマ的影響を与えていたが、女性のコミュニティに馴染めなかったり、理想とする「男性との関係」を構築できなかったりで可哀そうといえば可哀そう。自らの醜い容姿のために尖った価値観(問題なのは男性への依存性か)を醸成し、結局幸せになれなかった。実は容姿が醜いと救いがないのでは???

  • そういえば容姿については、男性も同様の圧力は受けている。例えば垢ぬけない雰囲気の男性なんかは、いかにもな「オタク」だとか「理系大学生にいそう」とか馬鹿にされたりする。もちろん要求の重さや、容姿の重要性は異なるであろうが、見た目の努力については人類が抱えている悩みであるし、そういった悩みを無視するカジマナの生き方は、ある種心地よく理想的な生き方ではないだろうか

  • 里佳が恋人の誠と別れるシーン。これは僕が男性だから思うのかもだけど、いや気に食わねーーーーーーーーーー。そうはならんやろ??っていう。別れるまでの時系列をまとめると、里佳が太ったのを厭う発言を誠がする→里佳イラっとする→誠が推しのアイドルに対し、太ったからという理由で急に冷める→イラっとする→誠からの連絡をしばらく放置する→誠怒る。え、何?別れるの?→里佳: え、そんなこと考えてなかったけどそんな気になってきちゃった。私これからデスクになって批判とかされるかもよ→誠: じゃあそうならないよう努力しろよ→別れる って感じなんだけど、いやいやいや「そうならないよう努力しろよ」という流れは不自然では? 作者が単に物語上二人を別れさせたくて、その決定打を作りました感が見える気がする。描写的に誠の方もあっさり別れたあたり、この女付き合う価値あるか?と思っていた可能性が高いが、世の中のカップルこういう感じで別れていくんだよな。すーーーーーぐ冷める。我々はあと何回別れるのを繰り返したら理想のパートナーと出会えるんですか? 300年か? いやわかるよ。わかるけど、世知辛くて悲しいね

  • 物語中の事件の真相については明かされず。まあこれは実際の事件をモチーフにしたもので、その事件の真相は明らかになっていないためであろうか。変に真相書いちゃうと、木嶋佳苗事件の真相はこうだったのか?とか変に印象ついちゃうし、仕方ないところがあるのかもしれないが、個人的にはやはり不完全燃焼感

不満点ばっかり書いてしまったが、総評的に考えることの多い良い作品であったと思う。